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就業規則Rules of Employment

 −「人間関係や企業慣行」から「契約」の時代に−
これまでは、官庁や業界が作成した就業規則の表書きを変えて流用しただけの就業規則でも大きな問題にならず、また、問題が起こっても、上司との人間関係や、労働組合による調整により事なきをえてきました。
しかしながら、非正規社員の増加(=企業へのロイヤリティが得にくい)や正社員でも長期の雇用が約束できない現在、就業規則の時代に合わせた見直しは急務となっています。
特に、平成20年に施行された「労働契約法」において、就業規則に一定の労働条件を保証する意味がもたらされることにより、就業規則はより重要性を増すこととなりました。

−雇用形態ごとの就業規則−
「パートタイマー就業規則」など個別の就業規則を作るように・・・と言われて久しいですが、今一度見直す時期が来ているものと考えます。
例えば、就業規則の届出において「労働者の過半数を代表するもの・・・」の意見を記した書面を提出するものとされていますが、その過半数が既に非正規雇用(パートタイマーや契約社員など)で占められ、大きな発言力を有する企業も少なくなくなっているからです。ましてや、改正労働契約法が成立しますと、正社員に近い働きをする非正規社員が認められにくくなることも予測されます。今、改めて雇用形態による労働条件の違いの切り分けを行っておきましょう。


労働基準法 第9章 就業規則 

(作成及び届出の義務)
第89条
常時10人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。
1. 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を2組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項
2. 賃金(臨時の賃金等を除く。以下この号において同じ。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
3. 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
3の2. 退職手当の定めをする場合においては、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項
4. 臨時の賃金等(退職手当を除く。)及び最低賃金額の定めをする場合においては、これに関する事項
5. 労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項
6. 安全及び衛生に関する定めをする場合においては、これに関する事項
7. 職業訓練に関する定めをする場合においては、これに関する事項
8. 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する定めをする場合においては、これに関する事項
9. 表彰及び制裁の定めをする場合においては、その種類及び程度に関する事項
10. 前各号に掲げるもののほか、当該事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合においては、これに関する事項

常時10人以上には、管理職、パートタイマー、社外に派遣中の者も含まれますが役員や臨時の日雇い労働者は含みません。
・1.の休暇には
1.〜3.においては、絶対的必要記載事項として必ず記載しなければなりません。
3の2〜10.においては、相対的必要記載事項として定めがある場合は記載しなければなりません。
その他任意的記載事項として企業独自の規則を設けることができます。服務規程、出張旅費、福利厚生など
・作成届出違反により30万円の罰則規定(労働基準法120条)あり。
・法106条にて周知義務が定められており、これに違反した場合も30万円の罰則規定があります。


(作成の手続)

     第90条
使用者は、就業規則の作成又は変更について、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の
意見を聴かなければならない
2 使用者は、前条の規定により届出をなすについて、前項の
意見を記した書面を添付しなければならない。

意見を聞くとは、原則「意見書」に意見も含め記入し、署名捺印をもらうことを要しますが、たとえ反対意見が述べられていても、要件を満たす限り労働基準監督署には受理してもらえます。しかしながらトラブルにならないよう事前に充分な説明を行うことが必要です。
・意見聴取違反により30万円以下の罰則規定(労働基準法120条)あり。


(制裁規定の制限)

第91条
就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が1賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない。

・賞与から減額する場合も、1回につき平均賃金の1日分の半額を超え、総額が賞与額の10分の1を超えてはいけません。
・減給制裁の制限違反により30万円以下の罰則規定(労働基準法120条)あり。


(法令及び労働協約との関係)

第92条
就業規則は、
法令又は当該事業場について適用される労働協約反してはならない。
2 行政官庁は、法令又は労働協約に
牴触する就業規則の変更を命ずることができる。

法令等労働協約>就業規則>労働契約 という関係になり、上位のもの(例:労働協約)に反するものを下位(例:就業規則)で定めた場合、上位のものが優先します。
・行政官庁(所轄労働基準監督署長)は、
実際に反している(抵触している)もののみ変更を命じることができます。


(労働契約との関係)

第93条
労働契約と就業規則との関係については、労働契約法 (平成19年法律第128号)第12条 の定めるところによる。

・前条を参照 就業規則>労働契約
 但し、就業規則の内容を上回る条件の労働契約の部分は、そのまま労働契約が優先します。
労働契約法12条
(就業規則違反の労働契約)第十二条 就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による。

参考:法106号の周知について 

(法令等の周知義務)
第106条
 使用者は、この法律及びこれに基づく命令の要旨、就業規則(※)〜を、常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること、書面を交付することその他の厚生労働省令で定める方法によつて、労働者に周知させなければならない
2.使用者は、この法律及びこの法律に基いて発する命令のうち、寄宿舎に関する規定及び寄宿舎規則を、寄宿舎の見易い場所に掲示し、又は備え付ける等の方法によって、寄宿舎に寄宿する労働者に
周知させなければならない

(※)
・労使協定
 貯蓄金管理に関する協定(第18条)
 購買代金などの賃金控除に関する協定(第24条)
 1カ月単位の変形労働時間制に関する協定(第32条の2)
 フレックスタイム制に関する協定(第32条の3)
 1年単位の変形労働時間制に関する協定(第32条の4)
 1週間単位の非定型的変形労働時間制に関する協定(第32条の5)
 一斉休憩の適用除外に関する協定(第34条)
 時間外労働・休日労働に関する協定(第36条)
 事業場外労働に関する協定(第38条の2)
 裁量労働に関する協定(第38条の3)
 年次有給休暇の計画的付与に関する協定(第39条)
 年次有給休暇取得日の賃金を健康保険の標準報酬日額で支払う制度に関する協定(第39条)
・企画業務型裁量労働制にかかる労使委員会の決議内容(第38条の4)

就業規則は、作成・届出だけではその効力は生じず、次のいずれかの方法で周知しなければなりません。
@常時
各作業場の見やすい場所に掲示・備え付ける
A書面で交付する
B磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を
 常時確認できる機器を設置する。

従業員が必要なときに速やかに就業規則を見ることができるようにしておくことが肝心です。

ふじおか社労士事務所 

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